§ロングの更なる活用方法を求めて
日高中部地区農業改良普及センター
主査 樫田 千代司
§水田における蜆(マシジミ)養殖(下)
立山 臣之
§’94年本誌既刊総目次
日高中部地区農業改良普及センター
主査 樫田 千代司
ロングの効果について,筆者は既に本誌及び他誌を通し,特にごぼうの施肥改善を中心に,にんじん,かぼちゃ,ながいも,ながねぎ等の分肥労力の省力化及び多収効果について,研究成果を紹介したところ,予想以上の関心をいただき感謝の念にたえません。
その後新たなロングの活用方法により,農業者に役立てないものかと,別の角度より研究に着手し,ある一定の成果を得,既に普及に移行しているところである。この度,更に投稿の機会を与えられたので,その中から ①たまねぎ砂礫質土壌の効果 ②はくさい軟腐病及び生理障害軽減効果 ③ながねぎの増収及び黒斑病軽減効果について紹介する。
砂礫質土壌は春の遅い北海道にあって,雪解け水の排水良化から春一番にたまねぎの移植作業が可能で,しかも生育が早く,早出し栽培に最も適する土壌である。
しかしながら,高温乾燥年には初期生育の段階から土壌中のEC値上昇による濃度障害のため,減収や低品質たまねぎの要因となり,逆に多雨年では肥料の溶脱を招き,生育中期以降の肥料欠乏により低収量となるなどやっかいな土壌である。
たまねぎの生育中特に生育前半(6月上中旬)の土壌中のEC値と収量の関係を調べてみると,0.3~0.4の範囲で何れのほ場においても最も多収が得られ,0.4以上で減収が目立っている。(図1)

そこで,いかような気象条件の年でも安定した高品質多収が得られる施肥法について思案していたところ,安定したチッソ放出をするロングに着目し,試験を重ねた結果一定の成果を得たので紹介する。
たまねぎはご承知のとおり,初期生育が収量品質に大きく関与し,初期生育の良悪によって決定されるといっても過言ではない。試験を重ねたところ従来の施肥法に比較し,初期生育は極めて順調で(写真1,表1),6月8日調査時のEC値(1:5)もロング混用区は0.3~0.4の域である。


結果として,高収量でしかも市場評価の高いL規格が大半をなし,上物比率においても慣行区に比較し,112~122%の増収となり,規格外収量をも減少させている。(表-1)
10a当りチッソ量は12kgを目度とし,その半量をロングとする。ロングの種類としては,ロング250の70日タイプとする。砂礫質の割合の少ないほ場においては,ロングの割合は40%程度とする。
北国,北海道においても,夏は25℃を超す夏日が続き更に30℃を超す真夏日に数日見舞われる。
そのため,軟腐病の発生に加え,芯ぐされ症,縁ぐされ症といった石灰欠乏症が発生し,更にゴマ症等の生理障害に悩まされ,夏期のはくさい栽培の最も大きな障害となっている。
従来の施肥法として①高度化成肥料の全量基肥法 ②高度化成肥料の基肥+分肥の2つの方法がとられてきた。そのため,高温により急激に肥料が分解し,1時的に多量のチッソ質肥料の吸収によりバランスがくずれ,上記の障害が発生されるものと推察される。
そこで,安定した肥料の分解,吸収(特にチッソ)が,夏はくさい栽培上欠かすことのできない施肥法と考え,数年に亘りロングを活用した施肥法を試みた結果,一定の成果を得たので,紹介する。
従来の施肥法では,図-2に示す①②の如くEC値の推移において急激な上昇が見られるが,③のロング混用区は極めて安定したEC値の推移が確認された。(図-2)

また,ロング混用区は何れの試験結果においても,軟腐病及び,縁ぐされ症,芯ぐされ症の軽減効果が確認された。(表2,3,4)



更に1球重の増加と,規格内率の向上も確認されている。(表2,4)
尚,平成5年度A町において,ロングを混用したほ場では,芯ぐされ症の発生は誠に軽微であったのに対し,従来の施肥法を用いたほ場では芯ぐされ症の発生により,ほとんど廃耕に追いやられた事例からも,ロングの効果が生産者にも認められ,急速に普及している。
10a当りのチッソ量の35~40%程度を基肥の高度化成と混用し,全量基肥として全層施用する。
ロングの種類としては40日タイプとする。
ながねぎの栽培で,特に秋露地栽培において,やっかいなものの1つとして,黒斑病がある。黒斑病は基本的に薬剤による防除であるが,発生を助長するものとして,後半の養分不足(特にチッソ)があげられている。北海道は全般的に旧盆の8月中旬以降より雨が多くなり,チッソの溶脱が考えられる。
従来の施肥法として,基肥+分肥方法(各培土時直前)がとられているが,ロングを活用して作条+全層の全量基肥法で,多収効果を既に確認していたので,更にロングにより生育後半までチッソを維持し,黒斑病の軽減ができないものかと,試験を重ねたところ,一定の成果を得たので紹介する。
生育は極めて順調で,収穫まで草勢は劣ることがなかった。黒斑病発生の軽減が確認され,併せて既試験結果どおり増収効果が高い。(表-5)

リン酸を含め早効きを目的とする肥料は,広幅作条施用とし,ロングは全層施用とする。
ロングの種類としては,100日タイプを使用し,混用割合は全チッソ量の50~70%とする。
この度は特殊土壌効果,石灰欠乏症による生理障害軽減効果及び病気の軽減効果について事例を紹介したが,他に菜豆,絹さやえん豆,きゃべつ,レタスなどで効果が確認されている。現在筆者は,施設野菜の高EC値ハウスの施肥対策として,いちご,メロン,きゅうり,とまと,ピーマン等に取り組んでいるが,ロングの活用により既に効果を上げている作物もある。従来ロングは野菜,花を中心に研究されてきたが,更に秋まき小麦,高級菜豆などの畑作物の他に飼料用作物への応用の可否等興味はつきない。
立山 臣之
(3)2)プランクトン増殖法
(イ)栄養源
(ロ)プランクトンの移植
3)養殖田の設置
(イ)立地条件の選定
(ロ)施工準備
(ハ)施工方法
(4)おわりに
一年中乾燥しない水溜まりや防火水槽の中では,顕微鏡で観察すると何種類かのプランクトンが見られる。これらはどこか他の池から風や鳥によって運ばれてきたものである。設置された貯水池や溜池でも,数カ月経てばプランクトンが棲息するようになるが,マシジミの餌としては充分な量とはいえない。そこで,人工的にプランクトンを培養する必要がある。この場合は一,二種類のものを純粋培養する訳ではないので,それほど難しくはない。要は経費がかからず簡便であれば良く,現在は次の処方をとっている。
すなわち,腐葉土:鶏糞=5:1(体積比)で混合し,目の粗い袋(麻袋程度)に入れ,口を結んで池の中に吊るす。袋の数や栄養源の量は池の大きさによって異なるが一坪程度の池ならば,タオル二つ折りの大きさの中に詰めたものを10個吊るし,7~10日ごとに新しいものと取り替えると良い。鶏糞の代わりにLPコートやロングの使用も可能である。
袋の栄養源を池の中に均一に拡散させるためにエアーポンプを用いる(酸素供給にもなる)。それがなければ時々,棒で掻き混ぜると良い。素堀りの池には混合物を4日に1回位バラ撒く。その回数,量は一概に決め難く,経験に基づくより他に方法はない。
できるだけ短期間に,マシジミに必要な量のプランクトンを増殖させるためには,近くに緑色のプランクトンが大量に棲んでいる池があれば,その水をこの池の中に運び込むと良い。その量は多いほど良い。また,独自に容器でプランクトンを増殖して池の中に移植する方法もあり,その要領は次のとおりである。
①日照時間の長い場所に大きな桶(大きさは任意)を数個用意し,水を入れる。
②腐葉土と鶏糞の混合物をタオル二つ折りの袋に一枚詰めて桶の中に入れて時々振り,一昼夜放置後,引き上げる(袋は50リットルの水に1個位)。
③近所の池または養魚場からできるだけ緑の水を採り,②の桶に入れる(50リットル位の水に5リットル位)。
④熱帯魚用エアーポンプで通気する(または,1~3日間,棒で攪拌)。冬期はヒーターを入れ水温を20~25℃に暖める。
上記方法で,夏期には一週間も経てば桶の水は緑に変わるので,それを池に注入する。その際,次回の種になる位の量を残しておく。この方法は実際に池の水を養殖田に流すようになった後も,プランクトンを補充するのに有効な方法である。
一定期間が過ぎて,プランクトンが充分に増殖したら,飼育田にこの水を流す。飼育田の流速,水深等も考慮して流入量と流出量が同量になるように調節しなければならない。また,プランクトンの量(水の色で判別)が急激に減少するようだったら,先に述べた桶での培養法等で補充する必要がある。
今まで述べたように,マシジミの生態を充分に把握して養殖田を設置する。
①年間を通じて水が確保できる(安定した水量)。
②餌の発生源となる貯水池,または人工池が設置できる(餌の確保)。
③災害常習地帯ではない(経営の安定)。
④生活雑排水や周囲の環境の影響を受けない(安全,健康)。
⑤地域の水利等に問題がない(地域条件)。
等以上の条件を加味しながら現地調査を進める。調査の結果,設置可能な場合は施工に伴う諸条件を検討する。
①施工に当たり,砂や各種資材(スレート,坑等)の搬入について検討する。
②従来の水田では,あまり水量を必要としなかったが,シジミ養殖では多くの水量を必要とするので基盤整地の時に出る排土を畦畔周囲の補強に用いる。
③水田の平板測量をして施工図を作成し,図面に基づき,材料の見積もりをする。
④排水口は水利上の面から,取水した水路に落水することを前提に設計する。
⑤場内の水路幅は水量に応じて決める。この場合,流速20~30cm/秒位になるようにするか,水路幅を1,2m幅で設定した後で水量を調節する。
〔使用する資材〕
・スレート:長さ2,730mm×幅900mm(縦に切って幅500mm,幅400mmとして使う)。
・杭:鉄筋の径10mm×長さ800mmのもの,または竹杭等を使う。
・砂:山砂,海砂のいずれでも良いが,必ず洗ったものを使う。


①畦畔の内側は垂直に,外側は勾配を付ける。
②基盤整地はレベルを取り,できるだけ高低差を少なくする。
③畦畔内側のスレート施工を実施する(スレートは幅の広い方(500mm)を使用し,土中に約15cm埋める)。
④飼育田に砂を平均10cmの厚さに敷き詰める。
⑤飼育田の中のスレートを敷設する。
⑥畦畔のスレート合わせ部分には,コーキング材等を塗布して水漏れを防止する。
⑦飼育田の中のスレートの合わせ部分は水漏れを最小限に抑え,水の流れをスムースにする工夫をする。
⑧畦畔の角およびスレートがT字型に合わさる部分はセメントで固める。
⑨取水口は水路から直接取る方法と,貯水池から取る方法があり,その現場に合わせた施工をする。
⑩取水口には,網かコンテナ等を置いて流れてくるゴミを除去する。
⑪排水口は,水温を調節できるようにする。夏期と冬期において水温の調節が必要だからである(図-5)。

水田でのシジミ養殖の実用化を進めるためには,夏場の水温上昇と直射日光が問題になることが判明しており,さらに検討が必要である。すなわち,シジミは日陰での生育が良く,夜行性で光をあまり必要としない。このように,まだまだ研究が不足しているのが実態であり,それぞれの地域の自然界での棲息を充分把握した上で,取り組む必要がある。
<1月号>
§変革への挑戦
チッソ旭肥料株式会社
常務取締役 吉田 俊郎
§愛知県における水稲の全量基肥施用法
愛知県農業総合試験場作物研究所
技師 今井 克彦
§LPコート肥料を用いた水稲品種ヒノヒカリの全量基肥施肥法
大分県農業技術センター
研究員 冨満 龍徳
<2月号>
§水稲栽培における追肥の水口流入施肥法
茨城県農業総合センター
竜ケ崎地区農業改良普及所
課長 柳町 進
専門員 木村 知
技師 久保 洋一
§新潟県の花き園芸
(雪深く,自然豊かな「ユリの里」堀之内町を例として)
JA新潟県経済連肥料工場
参与 幸田 達治
(元 新潟県園芸試験場長)
<3月号>
§北海道における平成5年度の水稲冷害と土壌肥料的課題
北海道立中央農業試験場農業土木部
主任研究員 前田 要
§野菜畑土壌の根圏環境
九州大学農学部
教授 松口 龍彦
<4月号>
§水稲の流入施肥法について
チッソ旭肥料株式会社
技術顧問 草野 秀
§市販の肥料入り培土でのロングと種籾の接触施肥による水稲無追肥育苗法
チッソ旭肥料(株)東北支店
<5月号>
§野菜のセル成型苗育苗におけるマイクロロングの利用
奈良県農業試験場 栽培課
総括研究員 泰松 恒男
§クリーン農業と緩効性肥料
北海道立中央農業試験場 企画情報室
室長 相馬 暁
§夏ネギにおけるホワイトエースによる一発施肥について
茨城県病害虫防除所 県南支所
技師 木村 宏明
(前 茨城県農業総合センター 石下地区農業改良普及所)
<6月号>
§被覆肥料を用いたシンビジウムの省力栽培
山梨県総合農業試験場 花き特作担当
研究員 加藤 肇
§ワンショット施肥による秋ギク栽培
鹿児島県農業試験場 大隅支場
土壌改良研究室
室長 上村 幸廣
(前 鹿児島県農業試験場 土壌肥料部)
<7月号>
§LPコート(Sタイプ)による水稲ヒノヒカリの1回全量(ワンショット)施肥
福岡県農政部農業技術課
土壌肥料専門技術員 山本 富三
(前 福岡県農業総合試験場 化学部)
§ヘデラの増殖技術改善による短期育苗と被覆肥料
東京都農業試験場園芸部
研究員 佐藤 澄仁
<8月号>
§被覆窒素肥料を利用した露地野菜の全量基肥施肥法
愛知県農業総合試験場・作物研究所
技師 池田 彰弘
(前 園芸研究所環境研究室)
§平成6年度農業観測の概要について
農林水産省大臣官房調査課
河本 幸子
<9・10月号>
§ファレノプシス(コチョウラン)の安定生産にかかわる栽培ポイン卜
日本大学農獣医学部
花卉園芸学研究室
窪田 聡・米田 和夫
§水稲流入施肥法の普及のために
チッソ旭肥料株式会社
技術顧問 草野 秀
<11月号>
§ハウス土壌の塩類集積を回避するための低ストレス型施肥
四国農業試験場土壊管理研究室
室長 小野 信一
§水田における蜆(マシジミ)養殖(上)
立山 臣之
§宮城県の奨励品種「ひとめぼれ」の特性と施肥法について
チッソ旭肥料株式会社 東北支店
今野 喜一
<12月号>
§ロングの更なる活用方法を求めて
日高中部地区農業改良普及センター
主査 樫田 千代司
§水田における蜆(マシジミ)養殖(下)
立山 臣之
§’94年本誌既刊総目次